ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「うた……」


腕を額に乗せたままハルが優しく呟く。

ハルの声は、高くもなく低くもなく、柔らかく耳に心地よくて。

「ん?」

「ユキヤナギの花言葉、知ってる?」

花言葉?

「ううん、知らない」

そういえば、調べたことなかったな。

ハルはゆっくりと身体を起こして、目の前に広がる白い花をじっと見つめて言った。


「愛らしさ、だよ」


「愛らしさ?」

私もそのギッシリと咲き誇る小さな花を見つめる。

「そう。花が小さくて可愛らしいからだって」

「へぇ、確かに。ピッタリだね」

「うん、でもね。こんなに小さな花なのに、桜やつつじよりもずっと長く咲いているだろ?」

ハルは静かに立ち上がり、そっと白い花をたくさん咲かせた細い枝を手に取る。

それは少し重たそうにも見えた。

「うん、そうだね」

長いと1ヶ月くらいは花を楽しめる。

「可愛らしいだけじゃない。強いんだよ、ユキヤナギは」

そう言って振り向いた君が、力強い眼差しを私に向けるからドキっとした。

「そっか……強くて可愛らしい。すごいね、ユキヤナギ」

私も、そんな風になりたい。

「うん、こんな風になりたいよね」

今度は優しい笑顔を見せるハル。

同じ気持ちに嬉しくなり、私も笑顔を返す。
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