ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「お疲れ様でしたぁ！お先に失礼します」

「はーい、また明日お願いね」

店長と、交代のパートのおばさんに挨拶をして店を出る。

外はまだ曇っている。

雨、降らないといいな。気ばっかり焦って、傘を持ってくるなんて思いつかなかった。

自転車のペダルを漕ぐ足が軽い。

ハルは、もう待っているだろうか。また、子供たちと遊んでいるかもしれないな。

懸命にペダルを漕いだからか、ハルのことばかり考えていたからか、どんどん胸が高まっていく。

公園の手前にある交差点での信号待ち。

深呼吸して鼓動を静める。急いで来たことがバレないように。

公園からは子供たちの声は聞こえなかったので、私はいつもの裏手の階段から丘へ登ることにする。

芝生に一歩足を踏み入れると、そこには立てた片膝に肘を乗せユキヤナギの花を物憂げに見つめているハルがいた。


ドキッ！


あの時の、寂しげなハルだった。

私は一瞬、声をかけるのをためらってしまう。

ハルの、あのいつものキラキラとした目の輝きがそこにはなかったからだ。
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