ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「君、名前は?」

微笑みを浮かべたままの彼が、私の目をしっかりと見据える。


「……うた」

「うた?」

私を見つめているように見えてどこか遠くを見ている、そんな眼差しを見ていたら素直に答えていた。

「そう、うた」

「そうか……うた、か」

彼は私から目を離し、空を仰いだ。

どこか物憂げな表情。

私には彼が何を考え感じているのかなんて、分かるわけもなく。

私の名前がそんなに気になるのだろうか、そんなことしか頭には浮かんで来なかった。

「僕は……ハル」

「うん」

ハルと名乗ったその子はまた白い花に顔を向け、陽の光りに目を細めていた。

私は、ただ呆然としているしかなくて。

私と同じように、この花が好きなのだろうか。
それともただ、偶然ここに来ただけ?

こんな風に知らない子と出会ったこともないし、何を話していいのか分からない。

そして、そのまま暫く2人の間には静かな沈黙の時間が流れていた。
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