ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「きれいだな………」

思わず呟いた。

もちろん周りには誰もいないと思っていたからであって、いつもブツブツと独り言を言っているわけではない。

こんな平日の夕暮れに、景色がいいわけでもないこの丘に僕以外の誰かがいるなんて、想像してなかったんだ。


「……ほんと、きれいだね」


えっ⁈

急に隣から聞こえてきた声に僕は、心臓が飛び出しそうなほど驚いて声のした方を見た。

そこには長い黒髪のキレイな女子高生が立ったまま、僕ではなくユキヤナギを眺めていた。

誰だ?僕と同じように花を眺めに来たのだろうか……。

「ああ、うん」

そう答えた僕の方に顔を向けて、少し微笑んだ彼女は、また、視線をユキヤナギへとやった。


「ユキヤナギ、好き?」

彼女はそう言いながら、僕の隣へ座った。

「……うん」

思いもよらない訪問者に僕は戸惑いながらも、ちゃんと返事だけはした。

「私も、好き」

見たことのない子だった。

風に舞うスカートを気にしながら膝を抱えて僕の隣に座る彼女は、それきり花を見つめたまま黙ってしまった。

僕は初対面の女子にする話題なんて思いつくはずもなかったので、仕方なく一緒に花を眺めることにした。


これが僕と彼女の、最初の出逢いだった。
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