ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
「うた」

「……ん?」

初めてハルに名前を呼ばれたのに、なぜだかとても自然だった。もう、何度もそう呼ばれているように。

「卒業、おめでとう」

えっ?

私が高校生だということは制服を見れば分かるだろう。でも、卒業生だということまでどうして分かったのだろう?

やっぱりこの子、不思議。

私の周りに疑問符がたくさん浮かんでいたのだろう。ハルは、ははっと笑って私の胸元を指差した。

そこには、外し忘れた『卒業おめでとう』と書かれた花飾り。

「ああ、あはは。ありがとう」

私は恥ずかしくなり、慌てて花飾りを外してポケットへと入れた。

そんな私を見て、ハルはまた笑う。

それはまるで、ユキヤナギの細い枝が風に揺れているようで。

その笑顔からは嫌味や曲がった気持ちは一切感じられず、ただただ裏表のないまっすぐなハルが、私には伝わってきた。

そしてまだ一言二言しか交わしていないのに、彼がどこから来た何者なのかも分からないのに、私は彼を魅力的だと思い始めていた。
< 9 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop