好きだから、じゃん
チョコレート1粒 (瀬戸 陽太)
「マジで最高、陽太!」
「さすがチャラさNo.1!」
クラスの男子たちと誰が一番早くsiriを落とせるかで遊んでいたら、見事一抜けした。
「お前のトークって、人工知能にも通用すんのな」
そう感心する男子に「やっぱ腕あるわ、俺」なんて笑ってから自分の席に戻る。
確かに自分でもトーク力はある方だと思う。
場の盛り上げ方も知っている。
だからこその悩みがあることはまだ誰にも言えていない。
自分の席に戻る途中、席に座って友達と楽しそうに笑う実音の姿が目に入ってきた。
幼稚園から高校までずっと一緒。
周りから見ればただの幼馴染。
だけど俺にとっては初恋の人。
実音を女として見るようになってから一度も俺は他の女を見ていない。
…信じてもらえないだろうな、俺の言葉じゃ。
ストレートの黒髪が窓から入ってくる風でさらりと揺れる。
「えー、どうしよ、でもダイエット中なんだよねー」
そんな話をしている実音の手のひらには一粒のチョコレート。