好きだから、じゃん

「1つくらい大丈夫だって」


友達に勧められても、たった1粒のチョコレートに真剣な視線を送っている。


お前、全然太ってねーじゃん、むしろ女子は少しくらいぽっちゃりしてるくらいの方がかわいいし。


「めっちゃ食べたい。でもその一口がデブの元とか言うしなー」


その手のひらに乗ったチョコレートを取ると、口に入れる。


驚いた顔で俺を見上げる実音にニッコリ笑いかける。


「めっちゃうまい」


途端、実音の顔が怒りで満ちていく。


「最低っ！！！」


「別にいいじゃん、ダイエットしてんでしょ？」


「でもこれはなつめちゃんがあたしにくれたやつでっ…」


「ありがとう」


友達にもニッコリと笑いかけると、「瀬戸にあげたんじゃない！高かったのに！」なんて怒られてしまう。


「ごめん、ごめん、じゃあこれあげる」


俺はポケットの中からフリスクを出すと、ケースごと実音の友達に渡した。


「これごと！？」


「フリスク高いんだからなー？」


「じゃあもらっとく」


友達はニッコリと笑うと、フリスクをポケットにしまった。