好きだから、じゃん
莉菜子が甘い言葉を欲しがっていることは俺もちゃんとわかっていた。
少女マンガに出てくるようなセリフの1つでもさらりと使えればいいんだろうけど、残念ながらそう言う類の言葉は苦手過ぎる。
言葉にはしなくてもちゃんと態度と行動には出してるつもりだから、それで伝わってほしいなんて思ってしまう。
女子がそういう生き物じゃないことは十分承知だけど。
「莉菜子はそうやって我慢しちゃうからダメなんだよ。彼氏なんだから、ちゃんと言った方がいいって。不満に思ったまま、付き合ってても楽しくなくない?」
「うーん・・・」
莉菜子はうなったまま、机に顔を伏せた。
「不安だって言えば絶対言ってくれると思うよ?莉菜子のことが好きなら絶対」
それ以上盗み聞きするのはやめて、教室に入る。
それでもまだ気付かず話に夢中な莉菜子たち。
「でも不安とか言うの苦手だなー」
「何で?不安なことは不安って言わなきゃ!」
「俺もそう思う」
一向に気付いてくれないから、仕方なく自分から声をかける。
途端、驚いた顔で振り返る莉菜子と若松。