手のひらの恋
呼び止められたきなりは
不思議そうに木内を見た。
「お前さ…」
彼はそう言いかけて
言葉を濁した。
「え?なに?」
きなりは理解できず
首をかしげた。
「ごめん、なんでもない!
じゃ、がんばれよー」
そう言って彼は去った。
(なんだったんだろ?)
きなりは気にしながらも
すぐに忘れていった。
塾にはいるなり
クラスが張り出されていた。
「きなりー!同じだよ!」
自分の名前を探す前に
楓がきなりを呼んだ。
「やったあ★」
指定された教室に行くと
やっぱり知らない顔ぶれ。
知っているのは
楓と、蓮見くんだけ。