手のひらの恋



涙を堪えてたきなりは
人の居ない場所を探して
階段に向かった。




「横溝‥」





不意に肩に手を置かれ
驚いて振り向いた。




「あ‥」




「今日行くだろ?」




今日は桜井のお通夜。
蓮見は隣の中学だったため
桜井と小学校が同じだった。




きなりは黙って頷いた。



蓮見はきなりの頭を
ぽんぽんとした。




きなりの溜まっていた涙は
勢いよく溢れ出した。




「好きなだけ泣け。
夜はしっかり笑って送ろう」




そう言って泣きやむまで
そばにいてくれた。
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