幼なじみとさくらんぼ
そもそも裕子は私たちの関係に夢を見すぎだと思う。
たしかに幼馴染み同士で恋人になるパターンはあるかもしれないけどそうじゃない人もいるわけで。
今さらハチとどうこうなるとか想像もできないよ。
「あ、田村くん!」
1組に向かう途中の廊下で田村くんに会った。
「岡崎さんどうしたの?」
「あの……ハチのことありがとうね」
コソッと小さな声でお礼を言った。
いまだにあの例のことがハチにバレてないのは田村くんのおかげだから。まだ周囲から冷たい視線を送られるし、色々言われてるのは知ってるけど、だんだんとみんなの関心も薄れつつあるし。
「いや八島がキレたほうが大変だから俺はやってるだけで、お礼なんて言わなくていいよ。それより岡崎さんこそ大丈夫?」
「うん。なんとか平気」
番号は週末までに変える予定だし、ラインは即ブロックして、最悪全て初期化してもいいかなって思ってる。
「サイト上にある岡崎さんの名前を消すよりあのサイト自体違法だからそっちを消すほうが早いかも。調べたら何回か警察に通報されてるらしいし、トラブルも多いらしいからそろそろちゃんと動いてくれると思うよ」
裕子もあれから調べてくれて、遊び半分で登録して被害に遭った子もいるし評判も悪いからサイトが消えるのは時間の問題だって言ってた。
私には私を信じてくれる人がいるから大丈夫。
誰かになにか言われても心が折れることはないから。