幼なじみとさくらんぼ



「七海ちゃん」

1限目の授業が終わって次は教室移動。その途中で栗原先輩に会った。


「昨日はどうもね。そういえば瞬が学校に来てないみたいなんだけどなんか知ってる?」

先輩はスマホを見ているから恐らく連絡しても返事がないんだろう。


「今日は別々で来たんでその……」

「そうなの?あ、もしかして喧嘩でもした?」

「え?」

「七海ちゃんの顔見たらなんとなくそうかなって」


私そんなにバレバレな顔してた?顔に出やすいタイプじゃないけど気をつけよう……。


「今度お茶でも飲みにいこうね!健二くんによろしく」

「あ、はい」


栗原先輩はそう言って私を通りすぎていった。

相変わらずいい匂いだな。なんかどこかで嗅いだことがある匂いなんだけど……どこでだっけ?

思い出せそうで思い出せない。


「私やっぱり栗原先輩って苦手だな。なんか全部計算してやってるようにしか見えなくて」

隣で裕子がぼそっと呟く。


「もう、裕子はまたそんなこと言って」

「だってカフェで鉢合わせとか数ある店の中でそんなことあり得る?」

「あり得るよ。実際に昨日あったもん」

「それに健二くんによろしくとか、そこら辺もあざとく見えちゃって好きになれないなぁ」


裕子は栗原先輩限定で毒舌だ。

私はいつも明るくてニコニコしてて社交的な先輩は学ぶところばかりだけどな。昨日会っただけの健二くんに対しても気が遣えるなんてスゴい……あれ?


そういえば昨日先輩と健二くんってお互いに自己紹介してたっけ?挨拶してたのは覚えてるけど、名前まではたしか名乗らなかったような……。

じゃ、なんで名前を知ってるんだろう?


私が呼んでるを聞いたとか?
それともハチから?

疑問は残ったけど、深く考えないようにした。


< 116 / 152 >

この作品をシェア

pagetop