幼なじみとさくらんぼ



なにやらコソコソと話してるように見えるのは気のせい?

健二くんは気づいてないみたいだけど、私は話そっちのけであっちが気になって仕方がない。

そういえば裕子がガラの悪い学校が周辺にあるから気をつけろって言ってたっけ。


明らかに学校には通ってなさそうな人たちだけど、あんな人でもデートスポットの公園に来たりするんだな。

漫画みたいに「イチャつきやがって!」とか絡まれたらどうしよう。なんかニヤニヤしてるから怪しいし、目は合わせちゃいけない気がする。


「七海ちゃんさ、今俺のことどう思ってる?」

「へ?」

男たちに気をとられて健二くんの話は耳に入ってなかったけど、たしかさっきまで学校の話をしてなかった?

いつの間にそんな話に……。


「ど、どうって?」

「俺けっこう七海ちゃんのこと本気なんだ。だから七海ちゃんの気持ちが知りたくて」

健二くんの好意を知っていて会ってるんだから、そう言われるのは当たり前だ。

だけどいざ直球に聞かれるとどう答えたらいいのか分からない。


――『でもナナは男とふたりで遊びに行ったりしないじゃん。それってあわよくばっていうか、いずれみたいな気持ちがあるのかと思って』

ふっとハチの言葉を思い出した。


私は健二くんのことをどう思ってたんだろう。

ハチが言うようにあわよくばとか、いずれ付き合うことになるかも、なんて本当に思ってた?

ううん。私はきっと思ってない。


健二くんと会う時はなぜかハチの顔ばかりが浮かんで、栗原先輩と上手くいっているハチに対して対抗心が少なからずあった。

ハチ以外の男の人と交流すればハチへの独占欲みたいなものは消えるって思ってたし、恋愛の真似事をしてハチに追いついているような気になってたのも事実。


ハチ離れすると言っておきながら、私の中心は今でもハチ。


< 122 / 152 >

この作品をシェア

pagetop