幼なじみとさくらんぼ
ティールチェリー
◇◇◇◇
次の日。私は少し早めに起きてお弁当をふたつ作った。今日ハチが学校に行くかわからないけど、今までの経験からしてハチの風邪は1日以上長引かない……はず。
今回は私から謝ろう。
どっちが悪いとかじゃなくて、私がハチと仲直りしたい。
私は気合いを入れてハチの家を訪ねると、エプロン姿のハチのお母さんが出てきた。
「あら、七海ちゃんおはよう」
「おはよう。ハチはまだ寝てる?」
学校へ行っても行かなくても、とりあえずハチの顔だけは見るって決めていた。家に上げるな宣言をされてしまってるけど、私は上がる!
それでハチにごめんねって言うんだ。
「それがあの子、今日は自分で起きてもう学校に行ったのよ」
「え?」
「しかも朝ごはんまでしっかり食べて。本当にどうしたのかしら?風邪の菌がおかしな場所に入ってなきゃいいけど……」
ハチが早起きしてもう家を出たなんて……嘘でしょ。あのハチだよ?風邪の菌の話は置いておいて、こんなこと今まで一度もなかった。
ハチが自分で起きられるといいな、とか時間ギリギリじゃなくて朝ごはんぐらい食べれる余裕を持とうよ、とか散々言ってきたけど、いざ実行されるとチクリと胸が痛い。
だってそんなにしっかりされたら、私がいる意味ないじゃん。
ダメなハチを叱りながら世話を焼くのが私たちの関係性だった。
ハチはまだ怒ってるの?
それとも私のことが本当に嫌になった?
どっちにしても、ハチの心になにか変化があったことは間違いない。
私は重たい気持ちのまま、ひとりで学校に向かった。