幼なじみとさくらんぼ
心が折れそう。
いや、折れたかもしれない。ポッキリと。
私は先生の目を盗んで食堂前の自販機に行った。かなり落ち込んでる私を見て裕子が「掃除はいいから外の空気でも吸ってきな」と言ってくれたから。
少し段差のある場所に座って深くため息をついた。
なんとなくだけど私が声をかけた時、ハチは迷惑そうな顔をしていた。いつもなら女子に引っ張られようと「もう怒ってないよ」って笑って返してくれるのに。
お弁当だって迷惑だって言えないから田村くんに渡してって言ったのかもしれない。
そこまでハチに避けられてるなんて……ショックを通り越して頭が真っ白。涙も出やしない。
「七海ちゃん。掃除サボり?ダルいよね。私も抜け出してきちゃった」
眩しいくらいの笑顔で現れたのは栗原先輩。
先輩は自販機で温かい飲み物を買うと、そのまま私の隣に腰を降ろした。
「なんだか元気ないね。大丈夫?」
先輩は長い足を伸ばして私のほうを見た。
地面に映るシルエットでも先輩はスタイルがいい。そんな影を私は一点に見つめていた。
「あの……ハチ私のことなにか言ってませんでしたか?」
聞くのを迷ったけど、もしかしたら私の愚痴をひとつやふたつ言ってるんじゃないかって。そしたらこうなってしまった原因が分かるかもしれないと思った。
「うーん。特に言ってなかったけど。まだ仲直りできてないの?」
「……はい。なんかすごい避けられてて」
「そっか……」
ハチが相談するタイプじゃないことも愚痴を言わないことも知っていた。だけど分かっていて聞いちゃうぐらい解決方法が見つからない。