幼なじみとさくらんぼ
「七海ちゃんって真面目だよね。喧嘩したり仲直りできないことって誰でもあるのにこんなに真剣に悩むなんて」
「……初めてなんです。あんなハチを見るのは」
「大切なんだ。瞬のこと」
「はい……え?いや、大切というかその……」
うっかり返事をしてしまったけど、先輩はハチの彼女なんだからそもそもハチとの仲直りの相談をしてる私がおかしい。
そういうのちゃんと気をつけてたはずなのに余裕がないからか、つい話してしまった。
「時間が経てば瞬も考え直すかもしれないし、あんまり気にしないほうがいいよ」
「……はい」
「それにさ、七海ちゃんはさっきも言ったけど真面目すぎるの!こんなことでずっと悩んでるなんて時間がもったいないよ。勝手に怒ってる人なんて放っておけばいいの。ね?」
……放っておくか。
その考えはなかったかも。
時間が経てばってよく言うけど、それって逆に怖くないのかなって思う。離れていたら距離も気持ちも遠くにいってしまう気がして。
ハチのいない日常なんて、今まで1日もなかったから。
それがお互い当たり前になってしまったら、幼馴染みが過去のものになってしまう。
「七海ちゃんにも彼氏とかできればきっと考え方も価値観も変わると思うよ。私は七海ちゃんと違って勉強できないし取り柄もないけど、恋愛のことなら相談に乗れると思うから、いつでも言ってね」
「……先輩……。ありがとうございます」
私に足りないのは経験なのかもしれない。
喧嘩も仲直りもハチとしかしたことがないから、きっと考えも行動もワンパターンしか思いつかなくて。だからこんな風に壁にぶち当たると私は脆(もろ)くなる。