幼なじみとさくらんぼ



またバスに揺られて私は公園前のバス停で降りた。

指定された空き地は公園からそんなに遠くない場所で、迷わなければ5分くらいで行けると思う。

私はスマホの画面に表示された地図を確認しながら歩き進めた。


そして暫くして、目的地とされている空き地と私の現在地が重なった。

……空き地ってここ?

そこは空き地というより工事跡地のような場所で、廃棄処分になった車がスクラップにされて山積みにされていた。

上を見ると電線が剥き出しになっているし、錆びた鉄の部品や鎖が転がっていたり垂れ下がっていたりして気味が悪い。


きっとここじゃない。

私が場所を間違えてしまったんだ。

それにスマホを見て歩いていたせいで、いつの間にか裏路地のようなところにいて、周りには人気が全くない。

とりあえず公園のほうに一旦戻ろう。

あそこなら人もいるし、最悪誰かに聞けば……。


「七海ちゃん」


ーーその時、後ろから名前を呼ばれた。

すぐに振り返ろうとしたら、首筋にチクリと痛みが走った。状況が分からないまま数秒後、頭がクラクラとしてきて周りの景色が回っている。

まるでメリーゴーランドを高速回転されたような感覚で、気持ち悪い。


最後に見えたのはぼんやりと浮かぶ健二くんの顔。

どこか笑っているようにも見えて次の瞬間、意識を失った。



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