幼なじみとさくらんぼ
たしかにハチは子供っぽいよ。人任せだし、お金の貸し借りにはうるさいし、レディファーストなんてするタイプじゃない。
だけどそんなこと欠点にならないぐらい良いところがたくさんあるし、ハチはこんな風に人を傷つけたりしない。
「中身スカスカなのはそっちでしょ。こんなことするなんて本当に最低だよ」
「最低?そうかもね。でも七海ちゃんだって大切な幼馴染みを放ったらかしにして何回もデートとかして楽しんでたじゃない?」
ずっと疑問に思ってたこと。
何回も会ってるなんて知るはずないのに知ってるし、自己紹介してないのに名前を知ってたり、同じ匂いがしたのは気のせいじゃなかった。
「先輩と健二くんは最初から知り合いだったの?」
健二くんに呼び出されて、注射器を私に打ったのも健二くんだった。それなのに先輩がいて、認めたくなかったけどそういうことだったんだって、やっと気づいた。
「うん。だから健二にお願いしたの。七海ちゃんを誘惑してって。瞬よりは賢いし中身もあるから私の思ってた通りの展開になってくれた」
あんな道端でぶつかって、すぐに私のことがタイプだって言ったりデートに誘ってきたり、色々と急展開だなって思ってた。
だけど、こんな出逢いもあるのかなって。
私も恋愛してみたいなって夢見たのは嘘じゃない。
「ほら、あの時の七海ちゃんは自分の情報をサイトに晒されて傷心気味だったでしょ?そういう時って心を開きやすいんだよね」
「……まさかあのサイトに私のことを登録したのって……」
ドクンドクンと嫌な動悸がする。