幼なじみとさくらんぼ
「うん。私。あのサイトって嫌がらせするのに使えるんだよね。登録すればすぐキモい親父から大量に連絡くるし。時間問わずだからけっこう精神的なダメージがあったでしょ?」
「な、なんで。心配してくれたり庇ってくれたのは……」
「あー、だって心折れちゃったらつまらないじゃない。だから瞬にも黙っておいてあげたの。感謝してね。七海ちゃんの隠しごとに協力してあげてたんだから」
きっと先輩は私が落ち込んでたり、ハチにバレないように必死で隠していたのも全部わかっていて、裏で笑っていたのかもしれない。
思えばハチと先輩が付き合いはじめて、幼馴染みの距離感について悩んで、そんな時あの事件が起きて。
健二くんに会って、ハチ離れをしようと決めて、それで喧嘩して。
全部全部、先輩の思い通りに私は動いていたんだと思ったら悔しくて泣けてきた。
「もう少し七海ちゃんが健二にのめり込んでくれたら面白かったのに恋愛初心者はガードだけ固くてダメだよね」
「健二くんまで利用して……」
「利用じゃないよ。ごめんね?健二は私の1番目の彼氏なの。私のことが好きだからなんでも言うこと聞くよ。ね?健二」
冷たいコンクリートの上で響く足音。それはゆっくり近づいてきて、先輩の隣で止まった。
「七海ちゃん。ごめんね」
なんの感情もない謝罪の言葉。
私は先輩と健二くんを睨みつけた。