幼なじみとさくらんぼ
そうかもね。
16年一緒にいるけど、お互いに肝心な部分は見て見ないふりをしている。
ハチは私がいないとダメだね。
私もハチがいないとダメだよ。
「ねぇハチ。私たちって幼馴染みじゃん。だから今まで変わらずにずっと一緒にいられたじゃん」
「うん」
幼馴染みに終わりなんてないから、その関係が壊れる可能性も、なくなることもないって思ってた。
それが一番、一緒にいられる選択だって思ってた。
だから……。
「私ハチに恋なんてしたくない」
ぎゅっとハチの洋服を掴んで、背中に顔を埋めた。
「そんなのしたらいつか絶対終わりがくる。恋愛なんてどっちかがダメになったら終わりでしょ。そしたらもう2度と同じ関係には戻れない」
彼氏彼女という関係になってしまったら、別れたあとの名前は元カレ、元カノという過去のものになる。
楽しかった思い出も笑った日々も、次の人ができれば塗り替えられて、上書きされていく。
そんなの絶対にイヤ。
「ダメになる前提なんだ」
ハチがちょっと鼻で笑ったから、私はすぐに言い返した。
「当たり前じゃん!好きになったら今以上にもっと独占欲が強くなるし、焼きもちも妬くし相手のことを縛りたくなる。そんなの窮屈でしかないよ」