幼なじみとさくらんぼ
たしかにハチの分を作ることは面倒ではない。新しいお弁当のおかずを考えるのは好きだし、上手く出来た時は写メなんか撮ったりもしてる。
でも先輩が言ってるのはそういうことじゃない。
「とにかく明日は私が作ってあげる!ね?」
「え、だから……」
「あーあと!今日一緒に帰ろ?ついでにうちに来る?誰もいないし道覚えたらいつでも来れるでしょ?」
先輩は話の変え方も距離の詰め方も慣れてる。
あのワガママハチが負けちゃってるし。
私は完全に出ていくタイミングを逃していた。
このままだと昼休みが終わるし自分のお弁当さえ食べられない。……とその時「あれ?」と田村くんが通りかかった。
「岡崎さんなにしてんの。八島に用事?」
田村くんナイス……!
「あのこれハチに渡しといてくれない?」
「弁当?八島ならそこに……」
「いいのいいの!じゃ、よろしくね!」
少し不自然過ぎたかな。一応急いでる演技はしたつもりだけど。だってさすがに先輩がいる前で渡せないよ。
そのあとハチからなんの連絡も来なかったけど多分お弁当は渡ったと思う。
とりあえず今日は仕方ないとして、明日は私作らない方がいいんだよね?
先輩が作るって言ってたし……いや、でもハチに確認してみるべきか。ダメだ。立ち聞きしてたのがバレる。