幼なじみとさくらんぼ
それから私は作るべきか作らないべきかの謎の葛藤をひたすらしていた。
「うわっ!なに?こんな時間に!」
白い湯気が立ち上るお風呂場。私は生首のように肩までお湯に浸かりお気に入りの入浴剤でブクブクしていた。
学校から帰宅後、制服を脱ぎ捨てて即入浴。外はまだ夕暮れ前で明るいことは窓を見れば分かる。
「アンタ考えごとする時お風呂入る癖やめなさい。お母さんたちが入る頃には冷たくなるでしょ」
「追い焚きすればいいじゃん」
「なら出る前にお風呂掃除してから出てよね」
まだお風呂掃除してなかったのか。お湯溜めちゃったし。
……そういえばなにか大事なことを忘れてる気がする。
なんだっけ。
そんなことを考えながら20分後にお風呂から出ると温まった体が一気に冷える感覚がした。それはハチからの着信の嵐。
ラインには【今どこにいる?】と可愛い顔文字から【電話に出て】の困ったスタンプ。それから【もしかして帰った?】と続き、あとはなにも来ていない。
思い出した……。
昨日ハチ『明日だけは帰るな』って言ってたっけ。
先輩に誘われてた気もするけど、お弁当のことですっかり忘れてた。
私は濡れた髪を急いでドライヤーで乾かして適当なスウェットに着替えた。とりあえずハチの家に行こうと玄関を開けるとちょうど前方から制服姿で歩いてくるハチが見えた。