幼なじみとさくらんぼ
「七海ちゃん」
休み時間。トイレから出てハンカチで手を拭いていると、栗原先輩が声をかけてきた。
1年の階にいるってことはハチのところに行ってきたのかな?それにしても相変わらずキレイな人だなぁ。
ハチにはもったいないぐらい。
「ねぇ七海ちゃんって映画見る?チケット貰ったんだけどあげようか?瞬のこと誘ったんだけど映画館に行くと眠くなるからって断られちゃった」
しかも気さくで気取ってない。
栗原先輩がくれたチケットは今話題の感動系の映画だった。少し見たいなって思ってたんだよね。
「貰っちゃっていいんですか?」
「もちろん!無駄にしちゃうところだったから逆に貰ってくれて助かっちゃった」
なんて眩しい笑顔……!
私が男だったら今ので確実に恋に落ちてた。
「あ、そういえば瞬が言ってたけど七海ちゃんアザラシのスタンプ欲しいんでしょ?プレゼントしてあげる」
「ええ?それはさすがに悪いです……!」
「いいのいいの♪ポイントいっぱい余ってるから気にしないで」
やっぱりハチにはもったいない人だ。
ハチは自分から恋愛の話はしないし、私も聞いたりしないけどちゃんと栗原先輩のこと大切にしてるんだろうか?
彼氏らしくリードしたり男らしく振る舞ったり……って、ハチにそれを求めちゃダメだった。