幼なじみとさくらんぼ



「ハチ~」

ぎゅるぎゅると鳴るお腹と戦いながら1組を覗いた。

いつも一緒にいる田村くん達はパンを食べながら談笑してるけどその中にハチはいない。

それに気づいた田村くんが私に呼び掛けた。


「岡崎さん、八島ならいないよ~!なんか飲み物買ってくるとか言って購買の方に行った」

「そうなの?ありがとう」

丁度よかった。そのままハチに何か買ってもらおう。

ハチもお金持ってないって……ことはないよね。
うん。おにぎり買う小銭くらいあるはず。

そもそもハチのせいでお弁当忘れたんだから奢ってもらうのは当然だし。

なんてことを思いながら中庭を抜けて行くと、けやきの木の下でハチを発見した。すぐ名前を呼びかけて「ハ」まで発音したけどすぐにそれを止めた。


「もう、八島くんって本当面白~いっ!」

ケタケタと響く笑い声。

ハチの腕をソフトに触りながら話していたのは2年の栗原先輩だった。

栗原先輩はいつもゆるふわ巻きの髪型をしていて、化粧や爪もばっちりで。すれ違うたびにいい匂いがするかなりキレイな人。

勿論、男子から人気だし笑い方や話し方も女子力が高い。


「ねぇ、今度みんなで遊びに行こうよ。友達がバイトしてるカラオケとかなら食べ物サービスしてくれるし」

「え、食べ物?まじすか!」

なんか誘われてるし食べ物に釣られてるし……。


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