幼なじみとさくらんぼ



【もし良かったら明日学校終わりに待ち合わせしない?】


それはつまりまた会おうってことだよね?

恋愛に疎い私でも誘われてるって分かるし、安易な気持ちで【いいよ】なんて言えない。

あとで裕子に相談してみようかな。

むしろ付いてきてほしいぐらいだけど、だったら行くなって感じだし。


「ニャアァ」

私が玄関に立ったまま悩んでいると、珍しくミーコが寄ってきた。

小学生の頃、捨てられてたミーコを私が見つけて「飼いたい」と駄々をこねたけどお父さんが猫アレルギーだからダメで。結局ハチの家が飼ってくれるようになった。

ハチにはなついてるけど私には全然で。
ハチいわくツンデレなんだって。


「あ、ミーコもしかして煮物の匂いがしたから来たんでしょ?」

「ニャアァ」

なんだか癒されるなぁ。

昨日からため息しかついてなかったから余計に。


「今日は私の部屋で一緒に寝ない?」なんて、頭を撫でようとした時、突然ミーコが走り出した。

あっ……と気づいた時にはもう遅くて、玄関のドアは開いたまま。ミーコはそのまま外に出て行ってしまった。

慌てて私も外に出たけどミーコの足は速くて、もう小さい後ろ姿しか見えない。


「ミーコ!待ってミーコ!ダメ!」

そう大声で叫んでもミーコが止まってくれるわけもなく、すぐにどこかへ走り去ってしまった。


ど、どうしよう……。

ミーコは家猫だし外になんて出たことがないはず。しかも近くには車の行き来が激しい道路があるし、もし車と接触したら……。

考えただけでぞわっと鳥肌がたった。

……なんで玄関を閉めなかったんだろう。普通に考えたら分かるじゃん。なに考えてんの私……。

いや、こんなことを後悔してる場合じゃない。


早くミーコを探さなきゃ……!!


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