幼なじみとさくらんぼ
ハチは短気で怒りっぽいけど必ずそれには理由があって。私も分かってるからハチの説教だけは素直に聞くことができる。
いつもワガママで私の方が口うるさいのに、たまにこうして立場が逆転してしまっても変わらずに居心地はいい。
ハチの気持ちも私の気持ちも落ち着いてきた頃、ようやくハチが私の顔を見た。
「そういえば最近なんか悩みある?」
「え……?」
突然そんなことを聞いてくるから動揺してしまった。
まさかハチにあのことを知られた?
いや、でも知っていたらこんなに冷静ではないだろうし、悩みがある?なんて遠回しな表現はしないはず。
「ナナが元気ないように見えるんだけど」
「そ、そうかな?普通に元気だよ。まぁハチの世話で疲れてる時もあるけどね」
あははっと笑って誤魔化してしまった。
ハチに嘘なんてつきたくないけど、やっぱり心配かけたくないって気持ちのほうが勝つ。
それに……あのサイトのこともその内容もハチには話したくない。気まずいとかじゃなくて、これは私の気持ちの問題。
「ねぇ、それよりいつまで手繋いでるの?」
あの公園からずっとハチは私の手を握ったまま。
思えばハチと手なんて繋いだの久しぶりかも。
普段は意識してないけど、ハチの手ってこんなに大きかったっけ?
私の手なんてすっぽり収まっちゃってるし、いつの間に成長したんだろう。私なんて身長も体格もさほど変わらないのにハチは毎日変化していく。
「ん?家までこのままだけど?」
「お母さんたちに見られたら恥ずかしいから離して」
「イヤだ」
「なんでよ」
「だっていなくなったら困るから」