幼なじみとさくらんぼ
「さすがにショックだったんだ」
「え……?」
「そう顔に書いてあるよ」
どうしよう。否定できない。
キス現場を目撃した時はショックというよりビックリだった。あのハチが?って感じで栗原先輩と上手くいけばいいなって心の中で応援してた。
だけど昨日見たキスマークは違う。
まるで自分のしるしのように付けられたハチの首筋を見て、私は今まで感じたことのない気持ちになってしまった。
私の経験してないことをハチがして、どんどん遠くに行ってしまうような感覚。
ハチは私のものじゃないし、だから仕方ないって思ってる自分に対して嫌悪感。
「……私ハチのこと〝もの゛みたいに思ってたのかな」
ハチはいつも隣にいて、それが当たり前だと思ってた。
だから私の知らないことが増えて、私の知らないハチになっていくのが無性に寂しい。
例えるなら小さい頃からずっと大切にしていたぬいぐるみを取られてしまったようなそんな感じがして。
やっぱり私はハチのことを自分のものみたいに思ってたんじゃないかって考えたら、すごくすごくイヤになった。
すると裕子は呆れた顔をして深いため息をついた。
「じゃ、この七海が大切にしてるウサギのシャーペンと八島くんは同等なの?」
ハチが誕生日にくれたシャーペン。そのつぶらな瞳が私をじーっと見つめていた。