幼なじみとさくらんぼ



そのあと私たちは無言で家へと歩いていた。

なんで無言なのかは分からない。だけど私から「健二くんは友達だよ~」なんてわざわざ言う必要もないし「へへ、見られちゃった」なんて可愛い子ぶったら熱でもあるのって言われそう。


「最近さ、スマホ放置しすぎじゃね?」

3歩先を歩くハチがやっと口を開いた。

もしかして連絡くれてた?問題が解決するまで極力スマホは触らないようにしてるし、ハチは事情を知らないからそう思うのはムリもないけど。


「そ、そんなの私の勝手でしょ」

私がそう言うとハチは横目で睨んできた。

そもそもハチの連絡なんて『今から家に行っていい?』とか『明日の時間割なんだっけ?』とかそんなのばっかりじゃん。

ハチが毎回聞くから1組の時間割まで覚えちゃったよ。まったく。


「だから不機嫌なの?」

ハチは本当に分かりやすい。顔も口調も機嫌ですぐに変わるから。


「だって嘘ついたじゃん」

「嘘?」

「裕子ちゃんと遊ぶって」

……あ。

言われてみればそう言ってハチとの帰りを断ったんだっけ。すっかり忘れていた。


「ハ、ハチだっていちいち私に報告したりしないでしょ」

「でも聞かれたら嘘はつかないよ」

「じゃ、色々聞いたら答えてくれるわけ?」

「どうぞ」

「……っ」


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