幼なじみとさくらんぼ
もしかして私って男の影すらない寂しいヤツとか思われてたりして……。いや、寂しくはないけど実際は本当に男友達もいないし、ませてる小学生の方が立派な恋愛してるんじゃないかって思うほどに。
「そ、そういうハチはどうなの?栗原先輩とうまくいってるの?」
「うーん。まぁまぁ」
「ラブラブですか?」
「うーん。普通?」
なにそれ!聞いたところで返事はこれだし、なんか歯がゆいというかムズムズするんだけど。
「……ハチはさ、大人になったの?」
ぽつりと呟いてみた。
聞こえてなければいいと思ってたのに、そういえばハチは聴力もよかったんだっけ。
「大人じゃないけど子どもでもないよ。だってもう16だし年頃ですからね」
なぜか不適な笑みを浮かべるハチは、やっぱり私の知っているハチじゃない気がする。
だってハチは虫を渡しただけで大泣きするような泣き虫で、戦隊もののベルトをして恥ずかしい必殺技の名前を大声で叫んでるようなヤツだった。
欲しいオモチャを買ってもらえなくて、ナナん家の子どもになる~ってまくら片手にうちに来た時も。
ふたりで段ボールで秘密基地を作って、ここに住もうと約束した時も。
どんぐりをいくつ集められるか競争して、最後には同じ数になってすごーいって笑い合った時も。
ずっとこんな関係が続いていくって思ってたよ。
いつの間にか追いつけないほど大きくなってしまったハチ。
ねぇ、ハチだけ大人にならないでよ。
私を置いていかないで。