欲情プール
もう一度だけ…


その一度に、欲の消化を託して。
拒否の傷を癒されたくて。



もしくは、はっきり断られれば…
ちゃんと割り切れるじゃないかと思った。




「っん…?…っどうした?」


お疲れ様の挨拶を終えても。
ドアの前から動かず、専務を見つめてた私に…

気付いたその人は、少し戸惑いがちに伺った。



「…

あの専務、仕事は終わったので…


もう一度。

慧剛って呼んでも、…いいですか?」


自分から誘うなんて初めてで。
こんな伝わり難い表現しか出来なかったけど…
それは辛うじて伝わったようで。

専務は大きくした目で私を捕らえて、動揺を示した。



心臓はずっと、壊れそうな程バクバクしてて。

頭の中では、言っちゃダメだって叫び声が聞こえるけど…


もう止まらない。




「私っ…」

近づいて来る専務を映しながら、明確に告げようとして…


「っもう一度専務と、」「悪い茉歩」

遮ってきた拒否の言葉に、胸が突き刺される!


だけど次の瞬間。


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