欲情プール
「いや。
俺ってこう見えて、本来は淡白なんだ。
だから茉歩の抱き方は、俺の抱き方ってより…特例?」


それは…
喜んでいいんだよね…?

ううんっ、むしろ!
嬉しくて堪らない…!



「私も本来、ベッドでもクールだよ?
それにこんなに感じたのも、求めたのも、慧剛が初めて。
だから私も、特例かなっ」

そう笑い返すと。

慧剛は少し驚いた様子で、何かを探るように見つめて来た。


まずい、余計な事言い過ぎた…!


「なぁ、それって…」

「よっぽど身体の相性がいいんだろうね」


そう躱すと慧剛は、視線を落として寂しそうに微笑んでた。






まだ一緒に居たいな…
それに、あのコの所に帰ってほしくない。

そんな心を読んだかのように。


「…帰る?」

帰りのエレベーター内で、問い掛けてきた慧剛。


「帰る、けど…」

だってもう着いちゃう…


2階から4階まではあっという間で、
到着して扉が開いた。


「…そっか、…おやすみ」

「おやすみなさい…」



ねぇ、慧剛。
帰らないって言ったら、どうするつもりだったの?

閉まった扉を見つめながら、心で切なく問い掛けた。


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