欲情プール
流れる欲情
「それ、次のプロジェクトですか?
私の業務は終わったので、手伝いますよ?」
さっきから難しい顔でPCや資料と睨み合いをしてる慧剛に、声掛ける。
「あ、いや、これは…
株主達を納得させる条件を模索してるんだ」
「…
やっぱり、会社は捨てないんですね」
「ん。
そんな事したら彼女はきっと、責任を感じて罪悪感を背負い込むだろうから」
自分の気持ちを押し殺してまで。
そんなにその人の事を…
寄りを戻さないのは嬉しい筈なのに…
切なさで息が詰まる。
それを誤魔化すように、話を他の矛先に向けた。
「でもこれ以上まだ、納得させる条件が必要なんですか?
それとも何か、企んでます?」
この前のプロジェクトは成功を収めて、順調に業績を伸ばしてるし。
あのコとの結婚で業務提携が上手くいけば、それで充分じゃないの?
慧剛は、そんな私を意味深に見つめて…
「さぁな」と笑った。
「なんですかそれ…!
相棒の私に、また秘密にする気ですかっ?」
そう怒ると。
ハハッて、やんちゃな笑顔が零れた。
最近の慧剛は思い詰めた雰囲気だったから…
その大好きな笑顔はかなり久しぶりに感じて。
胸がどうしょうもなく握り締められる 。