欲情プール
次の日、早速。
私を直接雇用している派遣会社に呼び出された。
「本当に、辞められるんですか?」
そう訊くその男性は、
この派遣会社を取り仕切ってる人で…
慧剛の影の秘書であり、本当の秘書だそうだ。
元々は幼少時からの教育係りだった人らしく。
唯一の信頼を置かれてると、自己紹介で告げられた。
きっと影で手となり足となり、その全てを支えていたんだろう。
この会社の経営者が慧剛だという事は、当社の書類上でしか明かされてないから…
その人の存在が影だったのも頷けるし。
慧剛の立場や忙しさなら、そんな存在がいても不思議じゃない。
ただ。
自分の存在が、慧剛の秘書としても価値がなく。
飾りや偽物でしかなかった事実が…
溺死しても尚、この心を傷めつけるだけ。
「はい。
退職させていただきます」
そして私は、クビにはならなかった。
もちろん、大崎不動産では働けなくなったけど。
要は秘書として派遣されてた状態から、この派遣会社の事務として働くようにと…
職務変更が下されただけ。