欲情プール
捨て駒だとか、職を奪うダメージを与えるとかって言ってたくせに…
そうは扱ってなくて。


私の雇用形態がトップシークレットだったのも、こうなった時の事を考えて…
少しでも守ろうとしてくれたんじゃないかって。

そう思う。


だけど私は。

慧剛が困らないように、その本当の秘書の方に引き継ぎだけして…
辞める事を選んだ。



ここを慧剛が経営してる以上…
何らかの形で関わる事に、苦しみ続ける。


例えばこんなふうに…

出された退職書類の代表者欄に、視線を落とした。



大崎慧剛



その文字を見るだけで、
その名前を聞くだけで、
私の胸はきっと…

幾度となく、潰れてしまうでしょう。






そして何よりも。


もう関わる事はない、そう断言した慧剛の立場を守る為。

また欲情に流されて、慧剛に近付くかもしれない私から守る為。



慧剛の選んだ道は、誰にも邪魔させない…

そう、私自身にも。








さよなら、慧剛。


どうかあなたの目的が、成し遂げられますように…

どうかあなたの人生が、幸せでありますように。


< 172 / 289 >

この作品をシェア

pagetop