欲情プール
聡の怒りと悲しみに、ただただ謝罪を返す事しか出来ずに…

そんな日々を繰り返した、ある日。



「なぁ、茉歩…

俺とあいつ、何が違った…?」

最近はだいぶん落ち着いた聡が、力なく尋ねて来た。


だけどそんなの解らないし…
慧剛の何が良かったかなんて、言い尽くせない。


ただ。

初めてその体温に触れた時の、騒めきは…


「…温度。


熱、かな…」


きっと運命的なものだって、思いたい。




「熱…

それって、情熱って事?」


その勘違いに。
敢えて苦笑いだけ返すと…

聡は自己解釈を続けた。


「そうだよな…
俺は優しさしか取り柄がなくて。

その優しさだって、相手に嫌われたくないとか、もっと好かれたいからで。

相手を情熱的に想ってたっていうより…
自分を守ってばかりの、自分の為の優しさだったんだろうな。

そんなんじゃ、駄目だよな…!」



そんな事ない。
聡の取り柄なんて、腐る程ある…!

その優しさにだって…
何度救われて、何度癒された来た事か。


けど。

自分の為の優しさ、か…


そう言えば慧剛はいつも。

誰かの為の我儘、だったね…


胸に、愛しさの火が疼く。


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