欲情プール
「でも。

あいつの情熱だって、身体だけだったんじゃないのか?

愛なんて、あったのか?」



「…

あったと、思ってる…」


今日まで色々と思い返した私は…
今ならそう思う。



あの、最後の日…

あの時の慧剛の言動は、私を守る為だったんじゃないかって。



私が弄ばれてる状況じゃなかったら…
あのコからの攻撃はこんなものじゃなかっただろう。

聡との事は過去の事だからと棚上げして、
きっと間違いなく訴えられてただろう。

それどころか晒しや嫌がらせを受けて、追い詰められてたかもしれない。
あのコの性格や権力なら、それも充分考えられる。


そしてきっと。

夫婦間の亀裂も、最小限に防いでくれたんだよね?


不貞の事実が発覚しても、それが弄ばれてただけの関係なら…
聡の過ちの方が、いくら過去でも重くなる。

そうなれば。
俺達は嵌められたんだと、同等意識が芽生えて…
聡の罪と相殺される。

私を責める筈の聡が、庇う状況になったのは…
慧剛が1人で悪者になってくれたからだ。



だとしたら私は…

慧剛の目的をサポートする為だとはいえ、
その気持ちを尽く無駄にしてしまったけれど。


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