欲情プール
「…

…そっか」

寂しげに呟く聡。


「先に苦しめたのは、俺だもんな…
自分で撒いた、種だよな。

なぁ、茉歩…


俺達、別れようか」


「っ…、聡っ…!」


「っ…
ごめんな、茉歩。

今までいっぱい、苦しめてっ…!」


その瞬間。
破裂しそうになった涙の結界を…

泣く資格なんてない私は、必死に抑え込んで!

内部で破裂したそれは、胸に無数の傷みを刻み込む…!


声を発する事も出来ずに、顔を歪めて。
ただただ、首を横に振る私を…

聡が優しく抱き締める。




ごめんね、聡…
ごめんなさい…!


苦しめたのは、私だって同じなのに…

自分の為なんかじゃなく、聡はやっぱり優しくて。



ありがとう…


どうか…
どうか!

聡の未来が、幸せでありますように。







そうして、私達の欲情は。
時節をなぞるように…

プールの納めの如く、流れていった。


< 178 / 289 >

この作品をシェア

pagetop