欲情プール
あれから、もうずっと…

慧剛の熱を浴びた身体は、あちこちと毟り取られてるようで。
心を亡くした魂は、じわじわと抜き取られてるようで。


代わりに…

慧剛を求める醜い欲情だけが、今でも尽きる事なく増え続けてる。




いつしかそれは、私の中に溜まってて…


気付けば私自身が、欲情のプールだ。




でもその欲情を流す栓は見当たらなくて…

シーズンオフのプールみたいに、どんどん膿んで腐ってく。


いっそ朽ち果ててしまえたら楽だけど…

きっとこの欲情に、一生苦しみ続けるんだろう。



もっともそれは、当然の報いだし…
覚悟の上だ。




ただ。

今日は慧剛の夢を見た所為かな…
いつもより苦しくて。


仕事が終わった頃には、精神力も尽きて。
職場近くにある公園のベンチに、崩れるように座り込んだ。


そんな時はいつも…
この音で安息を得る。

慧剛がくれたお揃いの腕時計を、そっと耳に当てて瞳を閉じると…
その秒針の奏でに耳を澄ました。



ねぇ、慧剛…

せめてこの時だけは、同じ時間を刻んでると思わせて?


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