欲情プール
「だから茉歩は…素直に甘えろ」

そう続けて、頭をぽんぽんと撫でると。


潤んでたその瞳から、ぼろっと涙が零れて…

夫婦関係を修復したいのに許せないといった葛藤や、その苦しみが吐露された。


そんな茉歩に胸が詰まって。

守りたくて仕方ないのに、俺は話を聞いてやる事しか出来なくて…

せめて半分背負えるように、ただただそれを受け止めていた。



すると、終盤は今日の話題で盛り上がったり…
店を出る頃には明るくなってはいたけど。

酔っても強がって甘えきれない茉歩が、いじらしくて仕方ない。


もっと甘えて欲しくて、焦ったくて。
そのクールな外壁を崩すように、グシャグシャと髪を乱したら…

怒られはしたものの。
乱れたまとめ髪が解かれて、やけに色っぽい下ろし髪を拝める事に。


ドキリとした俺は思わず、まとめ直そうとした手を掴んで阻止すると。

途端、胸が騒ぎ出す。


茉歩が欲しい。

そんな思いに駆られて、訴えるように見つめると…
茉歩は堪らなそうにして、この手を解こうした。


離したくない、そう思ったところで。

視界にタクシーを捉えた俺は、乗車への誘導にかこつけてしっかりと繋ぎ直した。
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