欲情プール
慧剛side:後編
「おはようございます」

「おはよう、茉歩」


1度だけ。
その提言通り、あれから俺達は今まで通りに接してた。


でもその実《じつ》。

俺は茉歩の肌を、その熱を忘れられずにいた。


幸い、旦那への気持ちは楽になれたようだけど…

俺の事はどう思ってるんだ?


正直、1度じゃただの報復でしかなくて。
露美の気を引く策略としては、大して効果を得られない。

だけど、本当は不貞行為を許せないはずの茉歩にこれ以上罪悪感を与えたくなくて…
俺の都合や欲求で苦しめたくなくて。


だからあの時俺は…
きっと自分にも、1度だけだと言い聞かせてた。

にもかかわらず。
今触れてしまったら、またこの腕の中にその熱を取り込んでしまいそうで…


そんな自分を押し殺して、平静を保ってたのに。

意味深に見つめないでくれっ。


我ながらけっこうヤバいな…

視線が絡むだけで、茉歩が欲しくて堪らなくなる。


肌が合うってヤツか。
それとも露美同様、手に入らないから欲しくなってるだけなのか…

本当に、どうかしてる。

欲望に苛まれて、苦し紛れに溜息を吐きこぼした。
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