欲情プール
それから数日後。

ここ最近の聡にしては、珍しく早く帰って来たと思ったら…



「茉歩…
ほんとにごめん…!

俺、お前の涙見たらっ、どーしていいか解らなくなって!
だって…、俺の事なんか大して執着してないと思ってたし…

でもっ、あれからもう2週間近く経って…
彼女がもう、限界なんだっ!

なぁ、頼むよ…
お願いしますっ…!」


そろそろ来ると思ってた、離婚の催促。


優しくて、私の要望ばかり聞いてくれてた聡の…
唯一譲れない要望が、離婚なんて。




「…


…いいよ」


「…えっ?」


急にすんなり承諾した私に、拍子抜けした様子の聡。


ここに来て漸く、とりあえず承諾するという策略に踏み切れたのは…
仕事を得た事で、ほんの少し余裕が出来たからかもしれない。



「え…

ほんと、に…?」


「…

ん…、聡をそうさせた私にも、原因はあると思う。

良い妻になれなくて、ごめんねっ……!」


悲しみを浮かべながら、痛切に訴えて。
健気さを取り繕ってはみたけど…

その気持ちも嘘じゃない。


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