欲情プール
「それより茉歩っ、
最近仕事終わるの早いんだなっ?
例のビッグプロジェクト、終わったんだ?」


「え…

うん、終わったよ。
それに仕事も、…変わったんだ」


「…えっ?

え、変わったって…?」


玄関でのカミングアウトに、
廊下を進んでた聡が立ち止まって振り返る。


「うん、今までの会社ね?先月いっぱいで辞めたの。
今は新しい会社で働いてる」


「え、それって…
もしかして俺の所為…?」


「…

違うよ。
ただ、聡の為ではあったかな。

あ、揚げ出しの材料買って来たから、今から作るねっ」


「待って茉歩!
俺の為って…、それどーゆう…!?」


横を通り過ぎようとした私の腕を掴んで。
困惑を露わにする聡。

絶好のタイミングだと思った。



ずっと伝えたかった。


ちゃんと聡の事を考えてるって、
こんなに愛してるって…

そんな自分の想いを伝えずに、無駄にしたくなかった。


だけど自ら伝えると恩着せがましくなって、逆効果だから…
こうやって聞かれるタイミングを待ってた。


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