欲情プール
「なぁ、茉歩…
茉歩、聞いてる?」
「…え?
あぁ、うん…
だったら、聡の気がすむようにして?」
慰謝料の金額についての話し合いで。
"私は要らないから、その分生まれてくる赤ちゃんの為に使って?"と、受け取りを辞退した私に対して…
"せめて100万は払いたい"と、譲らない聡。
辞退したのは、健気さを演出した策略だったけど…
それだけじゃない。
お金なんかで片付けられたくなかった私と。
誠意のようで、罪の意識を軽くしようとしてるだけの聡。
そんなやり取りの最中に…
私は専務の体温を思い出して、意識が逸れてた。
「ところで…
離婚の事、お義父さん達にはいつ話すの?
同じタイミングで、私も親に話さないといけないし…」
そう急かすのには、訳がある。
真面目な聡の両親と、小煩い私の両親に話せば、離婚を阻止してくれるかもしれないから。
「うん…
そうなんだけどさ…
正直今さら、少し迷ってるんだ…」
「迷ってる?
まさか、離婚の事話さないつもり!?」