欲情プール
そんな頃。

大崎不動産は、新規プロジェクトに向けて慌ただしくなっていて…
専務のサポートをする秘書にも、当然その波が押し寄せていた。

けど私にとっては、胸の痛みを誤魔化せて丁度いい。


「専務。
プロジェクトのプレゼン資料です」


「ありがとう。
そこに置いといてくれ」


業績を格段に伸ばして来た専務が打ち出した、新たなプロジェクトで。
会社のさらなる成長が期待されてるから…
専務からも張り詰めた様子が垣間見える。


私は、そんな専務の力に少しでもなりたくて。

「あの、余計な口出しをして申し訳ないんですが…」


「ん?…何だ?」

PCから逸らさなかった鋭い視線が、優しく変化して私を捉える。


「あ、中断させてしまって、すみません。

この顧客行動追跡ツールなんですが、うちの…
じゃなくて、前の会社で制作したばかりのツールの方が、使いやすいかと思うんですが…?」


途端。
専務の目が、獲物を見つけたように変化する。


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