欲情プール
「おはようございます。
早いですね?」
誰も居ないと思ってたロビーから、突然掛けられた挨拶に…
コツコツと進んでた私は、ビクッとその声の方に顔を向けた。
このマンションは、1・2階にある大崎不動産の持ちビルで。
挨拶して来たのは、たまに見かけるそこの従業員だった。
「…っ、おはようございます」
何事もなかったように、微笑で応えて。
颯爽とその前を通り過ぎようとしたら…
「…大丈夫ですか?」
「……え?」
涙目に気付いたのか…
だからってデリカシーのない介入に、少し眉をひそめて振り返った。
「いえ、今日も頑張って下さい」
そんな私に臆する事なく、その人はとても…
とても優しい眼差しで、送り出してくれた。
少しワイルドな風体からは、想像もつかないギャップに…
軽く戸惑いつつも会釈を返して、私はその場を後にした。