欲情プール
そんな時。


「来週、2日間かけて他県の営業所を回る事になった。
それで…
旦那さんと仲直りした所に水を差して悪いけど、茉歩も来れそうか?」

突然な、出張要請。


「もちろんです。ご一緒します」

今の私にとっては、水を差されるどころか有難い。


聡との生活は、日に日に息苦しさを増して。
どこかで息抜きしなきゃ、自らそれを壊してしまいそうだった。








そんな出張は…

当然、私が必要なくらい慌ただしいと思っていたら。


「茉歩っ、これも食え?
今までにない食感で、かなりクセになるから!」


「はいっ。
でももう、けっこうお腹が苦しいかも」



出張での業務は、動き出した新規プロジェクトの視察と。
不動産情報誌で接客1位等に選ばれた店舗への、表彰と労い。

でもそれらはすぐに終わり。


大半は…
専務の我儘で付き合わされた、その土地の名所とか美味いもの巡りだった。



「あのっ。
色々と楽しかったですし、こんなに美味しいものを頂けて、役得だとは思うんですが…

私が来た意味、ありました?」


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