欲情プール
私の分の出張経費を申し訳なく感じてると。


「あったよ。
茉歩の明るい笑顔が見れた」


なんて。
この人は…!

何で気付かなかったんだろう!


専務は私の状態を察して、息抜き目的で誘ってくれたんだ…



だけど。


「困ります。
そんな事の為に、会社の経費を使わないで下さい」


「大丈夫。
茉歩の分は俺の自腹だから」


「っ、だったら余計困ります!
専務にそこまでしてもらう理由が、」

「あるよ」


私の言い分を遮って。
専務は優しい眼差しで、続きを語る。


「茉歩のそんな笑顔を見るとさ。
それが俺の活力になって、仕事効率がかなり上がるんだ」



胸がぎゅっと、痛いくらい疼いた…!


何でこんな苦しい時に、
そんな嬉しい事言うの…?

また、甘えたくなる…



「だから茉歩は、…素直に甘えろ」


そこで掛けられた追い打ちの言葉と。
頭をぽんぽんする体温に…

滲んだ涙が決壊する。



それは、感情の決壊も促して…
抱えてる苦しみが、言葉になって溢れ出す。


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