スノー アンド アプリコット
「いい加減にしなさいよ!!」
あたしはもう言葉でしか抵抗する手段がない。
両手は固定され、左脚にはユキが体重をかけていて、右足は手でつかまれている。
フレアスカートの裾が腰まではらりと落ちて、あたしの素足は剥き出しだ。
ユキは無視した。
なんなの?
ユキはいつだってあたしの言いなりだった。出会った時から、それが当然だった。
あたしは混乱する。混乱してる場合じゃない、と思いながら、混乱する。
ユキはあたしの脚を値段の張る飴みたいに、飽きずに舐めまわす。反対側の素肌をつうっと手で辿っては戻り、無理矢理あたしの快感を引き出そうとしている。おかしい。こんなの、おかしい。
確かにあたしは女だけど、男にいいように玩ばれたことなんてない。それはあたしが誰といても、常に主導権を握ってきたからだ。
それなのに、まさか、ユキになんて。そのくせ、膝の裏から太ももにかけてを、次第に頭を垂れていきながら舐める姿は、下僕そのものだった。
「…んっ…」
下着のきわまでじっくり右脚を舐め尽くすとベッドに放り出して、ユキはあたしの首元に顔を埋めた。首すじを軽く触れたり食んだりされているうちに唇が鎖骨あたりまで下りてきて、一方、手は二の腕の内側をゆっくりと往復していた。もうどうしようもなくぞくぞくして、あたしは震えた。
「…なんなのよっ、ほんとにっ…」
必死に出す声が、鼻にかかっているのを自分でも感じた。
指先は脇を丁寧に撫でてから、胸の丸みをゆっくり辿る。何周も何周も、焦らすように円を描く。
「あんた、あたしが好きなの?」
「………」
動揺させる為に咄嗟に絞り出した台詞に、何がおかしいのか、ユキが肩を震わせた。
「今更か、なあ。俺何度も言ったよなあ、好きだって。本当に俺の言うことなんて何も聞いちゃいないんだな。」
耳元でそう言って、そのまま耳朶を噛んだ。
「ちょっ…」
そう、確かにユキは中学生の頃から、高校生のあたしに好きだとか付き合えとかそんなようなことを言っていた。クソガキだと思っていた。ガキが何を言ってるんだ、って。