サイドシー
この展開になる前のことを話しておこう。


医学部の僕は、医大を卒業して全く知らない、この街に研修生として、やってきた。日々いそがしいが毎日、充実していた。

僕が、診ている病棟に１人、気になる患者がいた。女性だ。院長が直に診察している。あまり状態は良くないらしい。

気になるのには、もう１つ理由がある。御見舞いにやって来る男性だ。彼女には、彼しか御見舞いには来ない。僕は、何度も病院で彼を目撃した。




場面を戻して、病院の部屋ー。

僕は、彼に聞き返した。

「好都合？どうしてですか？」

そう聞いた僕だったが、察しはついていた。彼女が、この世を去ってからの遺産が目的なのだと……。

男は、少し間をおいてから、話始めた。

「私が、あなたくらいの年齢の時に大失恋をしましてね。
ある女性を友達と取り合ったんですよ。その友達と彼女に同時に告白して、彼女は友達の方を選びました。
私は何もかもが嫌になりました。見えるもの全てが灰色で、聞くこと全てが彼女のことを連想させました」

男は、ため息をついて話を続けた。

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表紙・目次

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