蒼の王様、紅の盗賊
あの膨大な程のお菓子は、一応は他人のもの。
ついつい手を出してしまったが、人の物に手を出すのはいけないことだ。
まぁ、ジルが言ってもつまみ食い現場を見られてしまったので、説得力はないが。
そう思い、制止に入ろうとするが
ぎっくり腰のせいで、何にも身動きが取れない。
その間に、子供たちは袋一杯に入ったお菓子に目をキラキラさせて
圧倒されたように、ポカンと口を開けていた。
「わぁ....お菓子だ!」
まるで宝物を見たかのように、目を煌めかせる子供たち。
まぁ、無理もない。
此処に住む子供たちは、満足に食べることも出来ない。
いつも飢えと貧困の中に居る子供たちだ。
だから彼等にとってお菓子なんて、夢のまた夢。宝物みたいなものだった。
しかも....こんなにたくさん。
子供たちには───宝物の山に見えたのかもしれない。
そして子供たちは、ジルの制止なんて全く耳に届いていないようで
吸い込まれるように菓子へ手を伸ばす。
幼すぎる子供たちにとって、こんな宝の山を目の前にしてお預け.....というのは無理だった。
────サクッ。
子供たちの口の中に、じんわりと砂糖の甘味が広がる。
その甘味に、子供たちはうっとりしたように顔を綻ばせる。